研究概要 |
本研究の目的は,ストレス惹起性のアルコール精神依存症のモデル実験動物を作成し,アストログリア細胞と同細胞から分泌されるサイトカインを指標に,神経-内分泌系のクロストーク・相互作用との関連性を明らかにして精神依存症発現メカニズムを解明することである。平成15年度は,モデル実験動物の作成を行い,視床下部および海馬の脳内インターロイキン(IL)の発現について検討した。 1)ストレス応答性アルコール依存症モデル実験動物 FischerおよびLewis系ラットを低温室内(4℃)で6時間の拘束ストレス負荷を与えた。次に通常の環境下(22±1℃)に戻し,0.1%砂糖水と6.0%アルコール含有0.1%砂糖水を8週間自由給水させた。砂糖水及び含アルコール水摂取量を連日測定して含アルコール水摂収量が50%を超えるものを高アルコール嗜好性群と認定し,ストレス応答性アルコール依存症モデル実験動物として用いた。各群の血中アルコール濃度は,Fischer系ラット(ストレス有:11.0mg/ml,ストレス無:6.0mg/ml),Lewis系ラット(ストレス有:5.6mg/ml,ストレス無:3.5mg/ml)であった。 2)グリア細胞の免疫組織化学的検索およびサイトカインの脳内特異的発現の検索 アストログリア(抗GFAP抗体)およびIL-1,IL-2,IL-6またはIL-10で二重免疫染色を行った結果,高アルコール嗜好性群では視床下部の室傍核と海馬において両陽性を示す細胞が対照群よりも多く見られた。この点については更なる解析を遂行中である。 以上の結果から,動物はストレス性の刺激によりアルコール依存症になったと考えられ,アルコール血中濃度とサイトカインのタンパク発現に関連が見られたことから,ストレス応答と脳内のサイトカイン産生には関連が見られることが明らかになった。
|