心理社会的治療(特にSocial Skills Training)が統合失調症の認知機能、精神症状、社会機能、QOLに及ぼす効果について検討するために、今年度は以下の研究を実施した。 対象はDSM-IVで統合失調症・統合失調感情障害・統合失調症様障害と診断され、外来通院を継続している者15人で、本人に本研究で実施する心理社会的治療プログラムへの参加意思が明確に確認され、本研究に書面での同意を得られた者とし、対象者には介入前に主観的QOL (SF-36・WHOQOL26)、社会機能(LASMI)、精神症状(BPRS)、認知機能(Wechsler Memory Scale・Wisconsin Card Sorting Test・Digit Span Distractibility Test・Trail making test A/B)を実施した。 これらの評価を実施後、対象者をランダムに心理社会的治療による介入群(8人)と対照群(7人)に割り付けた。なお認知機能の評価者や対象者の主治医に対しては、対象者がどちらの群に割り付けられたかは分からないようにした。対照群は通常の外来診療を継続した。心理社会的治療プログラムとして「地域生活への再参加プログラム(丸善)」をベースにし、1.服薬自己管理技能、2.症状自己管理技能、3.対人関係技能(基本会話技能)、4.問題解決技能、5.ストレス対処技能から構成される5つの自立生活技能を網羅した独自のモジュールを作成した。セッションは週1回・1セッション60分で全16回実施した。各セッションの前半の20分は記憶機能・注意機能を高めるための認知機能リハビリテーションを実施した。 現在介入後の主観的QOL、社会機能、精神症状、認知機能を評価中であり、介入前後の評価値を比較検討することで心理社会的治療プログラムが統合失調症のQOL社会機能・認知機能に与える効果が明らかになるものと思われる。
|