統合失調症において認められる多様な認知機能障害は日常生活障害と関連が強いことが指摘されている。そこで心理社会的治療、特にSocial Skills Trainingが統合失調症の認知機能、精神症状、社会機能、QOLに及ぼす効果について検討するために、ランダム化比較臨床研究を実施した。 (対象・方法) 外来に通院しているDSM-IVで統合失調症と診断された15人(全例本研究に書面での同意を得た)を対象とし、全例に介入前に主観的QOL (SF-36・WHOQOL-26)、社会機能(LASMI)'、精神症状(BPRS)、認知機能(Wechsler Memory Scale・Wisconsin Card Sorting Test・Digit Span Distractibility Test・Trail making test A/B)による評価を行った。そして対象者をランダムに心理社会的治療群(8人)と対照群(7人)に割り付けた。対照群は通常の外来診療を継続し、心理社会的治療群は服薬自己管理技能・症状自己管理技能・対人関係技能と認知機能リハビリテーションを組み合わせたトレーニングを週1回・1セッション60分で全16回実施した。 (結果) Wechsler Memory Scaleで評価される言語性記憶、注意・集中力のサブスコアやLASMIの対人関係サブスケールのスコアにおいて、心理社会的治療群は対照群よりも大きな改善傾向が認められた。精神症状は両群ともに改善を認めたが、有意な差は認められなかった。さらに言語性記憶の改善度と対人関係技能の改善度の間には有意な相関(Spearman順位相関係数r=-0.91)が認められた。本研究によって、統合失調症における言語性記憶機能の改善が、対人的な社会機能の改善やさらに主観的QOLの改善に関連している可能性があることが明らかになった。
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