平成16年度は群馬県太田市にあるカトリック教会において、日系ブラジル人の成人を対象に、彼らの子女にあたる児童・生徒が不登校やいじめ、非行などの問題に直面したときに、どのような援助探査行動(help-seeking behavior)を起こすかを調査した。調査には、平成15年度の予備調査の結果を踏まえて作成したポルトガル語の質問紙を使用し、半聞き取り方式で行った。また、比較対照として、スペイン語版の質問紙を用いて、在日日系ペルー人に対する調査も同時に行った。調査結果の概要としては、これらの問題が生じたときに、a)両親の責任と考える者が極めて多く、b)対処方法は「子供を説得する」か「相談する」が多く、c)相談する場合には学校の先生か専門家が主な対象であり、d)子供を母国に戻す者は少数に止まり、e)いじめは学校の対応の問題であり不登校や非行とは別個の問題として捉えていることなどが特徴的であった。また、在日日系ペルー人との比較では、在日日系ペルー人は在日日系ブラジル人に比べて「相談する」よりも「子供を説得する」ことが多く、相談する対象は専門家に偏っていた。これらのことから、両親が不登校やいじめなどを家族の問題として自分たちで抱えてしまう傾向や、同国人によるコミュニティの規模が大きい方が、適応が順調に進むことなどが示唆された。平成17年度は、これらの結果を踏まえて、個別の事例の調査などを通して、具体的な施策の提言も視野に入れた検討を行う予定である。なお、現在までの調査結果の一部は、第28回国際心理学会議(北京:平成16年8月11日〜14日)および第18回世界社会精神医学会(神戸:平成16年10月24日〜27)で開催されたシンポジウムで報告した。
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