当院を受診したDSM IVで診断された88人の大うつ病性障害の患者に対して(昨年より34例増加)選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であるFluvoxamineを投与し、投与前と投与8週後ハミルトン抑うつ評価尺度(HAM-D)の得点を評価すると共に、倫理審査委員会の承認に基づいて説明と同意の上、遺伝子検体を得た。気分障害の疾患脆弱性や薬物反応性との関係が推測されるセロトニントランスポーター、セロトニン2A受容体、セロトニン3A受容体のSNPについて、RFLP法、ダイレクトシークエンス法(サイクルシークエンス法による)によってgenotypingを施行した。HAM-Dの得点変化から反応・非反応群に分けて関連解析を行ったが、いずれのSNPにおいても有意な関連は認められなかった。また、これらのgenotypeに性・年齢・baseline HAM-Dを更に独立変数として加え、HAM-Dの変化を従属変数として多重回帰分析を施行したが、やはり有意な関連をもつ要因は見出されなかった。次いで、他のセロトニン受容体であるセロトニン1A、セロトニン1B、セロトニン1D、セロトニン1Eの各遺伝子、またその他気分障害や他の精神疾患、向精神薬との関係が示唆されるCRHR1、TPH2、FKBP5、DNAJC5、NDRG2、SERPINI1、glycoprotein M6B、NRG1、SIGMA1、RNF103といった候補遺伝子についても、同様の解析を行う為順次genotypeを進行中であるが、現在の所有意な関連の認められるものは見つかっていない。 なお、研究補助金は上記のサイクルシークエンス法、RFLP法、これらの基礎となるPCR法を行うための試薬などの消耗品の購入に活用された。
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