目的は、非定型抗精神病薬が神経学的徴候および患者の予後やQOLにどのような影響を与えるのかを調査することである。対象はDSM-IVで統合失調症と診断された患者で、まず過去に神経学的徴候の調査を行った時に使用していた薬剤により定型抗精神病薬使用群と非定型抗精神病薬使用群の2群に分別した。そして、神経学的徴候のフォローアップ調査と同時に、日常生活機能の全体的評価尺度(GAF)およびクオリティ・オブ・ライフ評価尺度(QLS)にて調査を行った。対象者のうち、現調査時点において、定型抗精神病薬服用者に対して非定型抗精神病薬が上乗せされたものや、また逆のパターンのものなど、定型・非定型抗精神病薬が混合で使用されている対象者は調査の結果から除外とした。そのため対象者はやや少なくなり、結果として定型抗精神病薬20名と非定型抗精神病薬使用群26名となった。それら2群において、神経学的徴候の総得点の改善度を比較した。改善度は、今回の神経学的徴候の総得点から過去の点数を引き算したものとして算出した。結果は、定型群が0±2点、非定型群が1±3点であり、t検定の結果では有意な差をみとめなかった。また同時にGAF、QLSを比較検討したところ、非定型群が定型群にくらべて有意に良い値を示した(p<0.05)。このことから、定型・非定型抗精神病薬の使用は、神経学的徴候に両者の改善度には差がみられなかったものの、非定型抗精神病薬を使用する方が日常生活機能やQOLには良い結果をもたらす可能性が示唆された。次に神経学的徴候の改善度とGAF、神経学的徴候の改善度とQLSとの相関を調査したところ、両者とも有意な相関は認めなかった(r=0.11、r=0.04)。このことから、神経学的徴候の改善度と日常生活機能およびQOLとの間には関連がないということが示唆された。ただ、神経学的徴候の改善度の数値を単純引き算として算出していることが統計的に有意な結果を示しにくい可能性や、各患者の調査時期の状態も結果に影響を与えている可能性があり、今後も引き続き調査をおこなっていく必要があるものと考えられた。
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