本研究は統合失調症発症Two-hitセオリー仮説に関して遺伝子改変動物を用い検証することを目的とし、本年度は高親和性neurotensin (NT)受容体遺伝子欠損マウス(Ntsr1 KO)の統合失調症病態モデルとしての位置づけを行動学、行動薬理学的手法により行うことを目標としている。Ntsr1 KOマウスに関して、統合失調症失調症行動学モデルである音刺激驚愕反応異常について学会発表を行った。さらに脳内におけるNT作動システムの理解のため、新規に作製した低親和性neurotensin受容体(Ntsr2)遺伝子欠損マウスについてNtsr1 KOと同時に行動学的解析を行い、その結果を学術誌に投稿発表した。Ntsr2 KOマウスはNtsr1 KOマウスと同様に見かけ上対象コントロールである野生型マウスと比較して異常が認められなかった、また現在のところ中枢神経系における形態学的異常も認められていない。そこで、Ntsr2 KOに対してNtsr2の生体機能を探索する目的で行動学的解析を行った。そのなかで熱痛覚試験;tail flick試験、hot plateテストを行い熱応答性に関して3種類の評価方法を用い検討したところ、hot plateテストにおけるjump忌避行動の潜時が対象マウスと比較して延長していることが明らかとなった。この結果は、Ntsr2は中枢神経系において脊髄より上位中枢レベルで熱痛覚に対して促進的に作用していることを示唆している。
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