研究概要 |
1.当科で樹立した野生型p53遺伝子を有し,EWS-FLIのキメラ遺伝子を有する放射線高感受性PNET細胞株に連続照射することで得られた放射線抵抗性株の差を放射線誘発アポトーシスを中心に検討した。細胞生残率曲線では高感受性株のDoは1.14,抵抗性株では1.37と差が認められ、高感受性株にのみ2Gy照射24時間後にラダー形成がみられた。対数増殖期にあるG2/M期の割合は高感受性株9.3%に対し抵抗性株15.3%であった。2Gy照射後のG2-blockは高感受性株で顕著であり、G2-blockからの解除も遅延していた。PCR-SSCP法では抵抗性株でp53遺伝子のexon-5,exon-6に変異が認められた。現在,照射後のマイクロアレイを用いた遺伝子発現の差を解析中である。 2.近年,低酸素に反応して種々の遺伝子を調節するHIF-1αが注目され,放射線治療における重要な予後因子として注目されつつある。そこで,子宮頸癌におけるHIF-1α発現の放射線治療成績への影響について検討した。対象は放射線単独で治療した子宮頸癌IIIB期38例とした。治療前の生検組織を用い,免疫組織学的手法によりHIF-1α,p53,bax,bcl-2の発現を調査した。また,HPV感染をPCR法で同定した。これらの因子の相関と治療成績に与える影響を検討した。HIF-1αは17例(45%)で強発現がみられたが,p53,bax,bcl-2の発現やHPVの感染との相関は認められなかった。HIF-1α陽性群は無再発生存率と遠隔転移率について有意に予後不良であった(5年無再発生存率;陽性群:41.2%,陰性群:75.6%,5年無遠隔転移生存率;陽性群:59.9%,陰性群:88.4%)。他の因子の治療成績への関与は認められなかった。以上からHIF-1αはIIIB期子宮頸癌の放射線治療後の遠隔転移に関与する予後因子となることが考えられた。この結果はInt J Radiat Oncol Biol Physに受理された。
|