研究概要 |
1.放射線単独で治療を施行したIIIB期子宮頸癌について、HIF-1が予後に影響することについて報告した。治療前の生検材料を用いて、p53,Bax,Bcl-2およびHIF-1αについて免疫染色した結果、HIF-1α陽性群の予後は陰性群に比較して、有意に無再発生存および無遠隔転移生存が不良であった。この結果はInt J Radiat Oncol Biol Physに報告した。 2.化学放射線治療を施行した食道癌患者の治療前の組織標本についてHIF-1,p53およびp21の免疫組織学的手法を用いて化学放射線療法の効果予測ができるかについて検討した結果、HIF-1陰性群のCR率は44.4%と陰性群に比較して有意に良好であった。治療前にHIF-1αを検討することで治療効果予測ができる可能性を示した。この結果はInt J Cancerに報告した。 3.当科で樹立した放射線高感受性PNET細胞株に放射線照射を施行することで得られた放射線抵抗性株について、放射線抵抗性獲得のメカニズムについて分子生物学的手法を用いて検討した。娘株の細胞増殖能は増加し、一方で放射線感受性は親株と比較し明らかに低下し、親株のDOが1.14に対し1.37となった。2Gy照射後のDNA断片化率も有意に低下し、ラダー形成も認められなくなった。マイクロアレイによる検討では対数増殖期にある両細胞株での遺伝子発現を比較した場合、抵抗性株で明らかに発現の低い11遺伝子はすべて親株を照射した場合に誘導される遺伝子であった。一方、抵抗性株で明らかに発現の高い遺伝子はすべて親株への照射で誘導されない遺伝子群であった。現在、国際誌に投稿中である。 4.食道癌細胞株を用いたradicicol併用温熱処理はHsp72およびHsp27の誘導にもかかわらず、殺細胞効果の増強が認められた。これは温熱単独で誘導されるRaf-1とErkの活性化がradicicolで抑制された結果と考えられた。さらに、このメカニズムはAktのリン酸化の抑制やRaf-1のHsp90への結合の抑制が関与しているものと考えられた。
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