研究概要 |
本年度は,癌治療効果の早期判定を可能とする放射性薬剤の開発にあたり,まず始めに,癌の放射線治療効果を早期に反映する細胞機能の探索を行った.エネルギー非依存性のアミノ酔トランスポータシステムによって輸送される[^<125>I]-iodo-alpha-methyl-L-tyrosine(^<125>I-IMT)とアミノ酸トランスポータシステムLによって取り込まれた後,細胞内でメチル基転移反応などのエネルギー依存的な代謝を受ける[^<14>C-methyl]methionine(^<14>C-Met)を用い,炭素線25Gyをヌードマウスに移植したC10glioma細胞に照射し,照射後経時的に両放射性薬剤の腫瘍への集積量を経時的に観察した.腫瘍細胞への^<125>I-IMTの集積量は,照射1日後に一過性の増加を示したが,その後減少し,照射3日後以降には,照射前と比べて腫瘍への集積に有意な減少が観察された.一方,^<14>C-Metの腫瘍への集積は,照射1日後には照射前の98%とあまり変化が見られなかったが,2日後には照射前の59%と有意に減少し、^<125>I-IMTより^<14>C-Metの腫瘍への集積の減少がより早期に観察された.また,炭素線25Gy照射前後における両アミノ酸の腫瘍細胞内代謝変化を検討したところ,^<125>I-IMTは照射前後において変化が無かったのに対し,^<14>C-Metは炭素線照射により未変化対の割合が,42%から68%にまで増加した.両アミノ酸はエネルギー非依存性のアミノ酸トランスポータシステムLによって取り込まれることから,取り込み過程に差は無く,また^<14>C-Metの腫瘍内代謝が変化していたことから,エネルギー非依存性の膜輸送に比べてエネルギー依存的な細胞内代謝がより鋭敏に治療効果を反映すると考えられる.従って,エネルギー依存性の細胞活動を反映する放射性ヨウ素標識薬剤の開発が有用であると考えられる.
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