これまでの研究において、臨床使用が十分可能な高い放射化学的純度、比放射能で血管内皮増殖因子(VEGF_<121>及びVEGF_<165>)の放射性ヨウ素標識を行い、担癌マウスを用いた動態評価を行ってきた。その結果、放射性ヨウ素標識VEGF_<121>がVEGF_<165>よりも腫瘍血管新生イメージング薬剤として有用であることが示唆された。本年度はオートラジオグラフィー法と免疫染色による組織学的な検討から、放射性ヨウ素標識VEGF_<121>の腫瘍血管新生に対する特異性について評価を行った。 ^<125>I-VEGF_<121>は腫瘍サイズが200mm^3以上の腫瘍では、それ以下の腫瘍に比べ約半分の集積率を示した。オートラジオグラフィーによる検討からサイズの小さい腫瘍では^<125>I-VEGF_<121>は全体的に均一な分布を示していたが、200mm^3以上の腫瘍では腫瘍辺縁でのみに高集積を示した。抗CD34抗体を用いた免疫染色による検討の結果、^<125>I-VEGF_<121>が高集積を示した部位は血管新生が活発に行われていることが確認できた。 以上、本研究課題についてまとめる。これまでに、^<123>I-VEGF_<165>による臨床研究が報告されたが、本研究成果から^<123>I-VEGF_<165>よりも^<123>I-VEGF_<121>のほうが血管新生を反映した良好な画像を得られることが期待できる。しかし、^<125>I-VEGF_<121>は血中への放射能が非常に高いため、イメージング薬剤や内部照射治療薬剤としてデメリットである。VEGFレセプターのひとつであるKDRはイメージングや治療ターゲットとしても非常に魅力的であることから、KDRをターゲットにした薬剤開発が今後の研究課題である。今回の研究成果は、血管新生をターゲットにした放射性医薬品開発を行う上で、その方向性を示すことができたことから、非常に有用であったと考える。
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