HOP-9P 0.1mM/kgを尾静脈より投与した際のマウス移植腫瘍(SCC-VII)中のマンガン濃度を、組織標本が得られた5検体のうち4検体について検討した。腫瘍部を6〜9分割した小切片におけるマンガン濃度の全検体での平均は5.4±2.2mg/kg(3.1-14mg/kg)であり、検体(1):6.6±1.9mg/kg、検体(2):4.2±0.8mg/kg、検体(3):6.0±3.1mg/kg、検体(4):4.2±0.6mg/kgであった。検体(2)と(4)に比べ、検体(1)と(3)では濃度の平均値が高く、各小切片間でのばらつきが大きかった。MRIにおける信号強度や組織標本からは、この違いを説明できる差異は得られなかった。HE染色切片との対比から腫瘍の生存部を50%以上含むと推測された小切片のマンガン濃度は、検体(1):5.1±2.0mg/kg、検体(2):5.9±0.9mg/kg、検体(3):4.7±4.2mg/kg、検体(4):3.4mg/kg(一小切片のみ)であり、大部分が壊死部と考えられた小切片のマンガン濃度は、検体(1):7.4±1.5mg/kg、検体(2):4.3±0.8mg/kg、検体(3):6.3±3.2mg/kg、検体(4):4.4±0.5mg/kgであった。検体(1)(3)(4)ではマンガンは腫瘍の生存部よりも壊死部により多く集積していたが、検体(2)では壊死部よりも生存部に多く集積していた。組織標本が得られた残りの一検体は、マンガン濃度分布を視覚的にとらえられる面分析を試みたが、感度が不十分でマンガン強度がバックグラウンドレベルであったため断念した。今回の研究ではマンガン、つまりHOP-9Pは生存部と壊死部の両方に分布したことが明らかとなった。壊死部により多く集積する可能性は示唆されたが確定にはいたらなかった。
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