油性造影剤であるリピオドール(iodized oil)は肝動脈から注入すると肝細胞癌に集積する性質を持っている。このリピオドールと増感剤としての鉄製剤および界面活性剤からwater in oilのエマルジョンを作成した。混合する鉄製剤としてフェジン(一般名:含糖酸化鉄)、ブルタール(一般名:コンドロイチン硫酸・鉄コロイド)、フェリデックス(一般名:フェルモキシデス)の3鉄製剤を使用しin vitroの凝固実験を行った。各鉄製剤を含んだ3種類のエマルジョンと卵白の混合液および卵白のみに対し、ラジオ波凝固用ニードルを用いて蛋白質の凝固実験を行い、フェジン含有時が最も凝固量が多いことがわかった。 続いてin vivo実験として、20kgの豚を用いて肝実質に対する凝固の増強効果および至適投与量を調べる実験を行った。in vitroの実験結果をふまえて増感剤としてのエマルジョンはフェジンを用いて作成した。 全身麻酔下で血管造影の手技を用いて左右中肝動脈にカテーテルを入れ分けて、薬剤非注入群(正常肝)、リピオドールのみ注入群、エマルジョン注入群を作成し、開腹直視下にラジオ波凝固用ニードルを用いて肝臓に対し凝固実験を行った。薬剤非注入群、リピオドール注入群、エマルジョン注入群のそれぞれの凝固範囲を測定し、さらに病理学的検討を行った。凝固範囲はエマルジョン注入群が最も広く、リピオドール注入群と薬剤非注入群では差は見られなかった。また、病理学的にはエマルジョン注入群が最も凝固壊死が強いことが確認された。 これまでの実験により鉄を含むエマルジョンの注入により、肝凝固の増強が得られることがわかった。今後は肝腫瘍の実験モデルの作成と肝腫瘍に対する凝固の増感効果の検討が必要である。
|