研究概要 |
今回の研究では,がんに対するZD1839・C225・トラスツズマブなどの分子標的薬剤・抗がん剤と放射線照射との併用効果に関する先行指標を明らかにすることを目標としており,「がん細胞の生存シグナルや増殖シグナル伝達の違いが,"放射線感受性"ならびに"分子標的薬剤と放射線照射との併用効果"にどのような影響を与えるのか」,を中心に検討している.今年度は,ヒト乳癌細胞株(SK-Br3)とヒト肺癌細胞株(TIG7)を用いて検討を行ってきた.SK-Br3,TIG7は,上皮増殖因子受容体であるEGFR・c-erbB2の発現はともに強陽性を示した.SK-Br3は放射線照射に対しては比較的抵抗性であり,照射後のコロニー形成法の初期データから算出したDo値は150cGy程度であった.しかし,増殖を示すdoubling timeは,EGFR・c-erbB2ともに強陽性を示したにもかかわらず,60時間程度と緩徐であった.生存シグナルや増殖シグナルに関連した伝達因子であるEGFR,AKT,c-erbB2,MAPKのタンパク発現の照射後の変化は,immunoblot analysisの初期データから,AKT以外のEGFR,c-erbB2,MAPKのタンパク発現が5Gy照射後6時間で増強した.さらに,細胞周期の変化としては,TIG7ではパクリタクセル投与後にはG2/M期の細胞が時間とともに増加していったが,ZD1839の投与後には細胞周期の変化は認めなかった.
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