肝内の血流動態を定量化するには、様々な方法が試みられている。しかし、肝臓は動脈と門脈の二重の血流支配を受けるため、動脈血流と門脈血流を個々に測定する方法は限られている。超音波ドプラによる肝血流動態の測定は、動脈血流と門脈血流を独立して測定できるが、脈管の主幹部レベルにおける血流に限局され、組織レベルでの血流動態を定量化することはできない。 近年、CT-Perfusionによる各臓器の血流測定が試みられている。CT-PerfusionはSingle Slice Cine Dynamic CTによって導き出された各組織のTime-Density Curveを数学的に処理することによって、CTの高い空間分解能に基づいた組織レベルでの血流動態を測定できる。しかしながら、肝臓については動脈血流と門脈血流を完全に分離して測定するには、従来施行されている静注法では不十分であり誤差が大きい。選択的肝動脈造影および経上腸間膜動脈的門脈造影と、CT-Perfusionを組み合わせることにより、組織レベルでの肝動脈血流および門脈血流の動態を完全に分離して純粋に測定できる。 従来、CT-Perfusionは臓器レベルで計算されていたが、近年のコンピューターの処理速度の高度化に伴い、組織レベルでの計算が可能となった。我々が今回使用する逆積分法によるCT-Perfusionは、バックグラウンドに投与された造影剤の影響を受けることなく、高い精度で組織レベルの血管容積、血液流入量、組織血流平均通過時間、血管透過性を定量化することができた。本研究では、選択的動脈造影下にCT-Perfusionを施行することによって、動脈、門脈の各々の血流を純粋に測定し、肝腫瘍が及ぼす肝内血流動態の変化を解明した。本研究成果はRadiation Medicine誌、Acta Radiologica誌に発表した。
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