基礎的検討として、正常健常者5名において、拡散テンソルMR画像および手指運動によるfunctional MRIを撮像した。functional MRIで賦活化された領域と3D tractographyで描出された錐体路の対応につき、検討を行った。結果として、functional MRIでは、前運動野、中心前回、中心後回で全例賦活化を認め、3D tractographyではこれらの領域に分布する錐体路の描出が全例で可能であった。 上記の検討結果を踏まえ、深部脳出血症例35例で拡散テンソルMR画像を撮像し、3D tractographyによる錐体路の描出を行った。また、描出された錐体路上に関心領域(Region of Interest : ROI)を設定し、等方的拡散の指標である、Apparent diffusion coefficient(ADC)と異方的拡散の指標である、fractional anisotropy(FA)の値を得た。錐体路の描出所見およびADC、FAの値と、発症1ヶ月の上肢および下肢の運動機能予後の関係を検討した。 3D tractographyは、血腫側では、錐体路が描出される群と描出されない群があった。描出される症例では、血腫位置に相応な偏位が認められた。描出されない群は、描出される群の運動機能予後を比較した場合、統計学的に有意に描出されない群が不良であった。ROIにより得られた結果は、運動機能予後が不良群においては、良好群に比し、錐体路上に局所的なADC低値を認めた。これらは、脳出血周囲の二次性の神経障害を示唆する所見と推察した。FAは統計学的に有意な差を認めなかった。拡散テンソル画像を用いた3D tractographyは、錐体路の描出の程度および錐体路上のROI解析を行うことにより、深部脳出血の運動機能予後予測に有用であると考えた。
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