研究概要 |
当該研究課題では,2年間の研究期間内に,甲状腺未分化癌細胞におけるプロテアーゼとプロテアーゼインヒビターの酵素活性ならびにその抑制効果を検討し,有効な治療法のない未分化癌の治療薬創薬事業への基礎的検討を行うことを目的に研究を行った. 平成15年度の研究成果として以下の結果を得た. (1)serine protease inhibitor familyのmaspinの異常発現が甲状腺低分化・未分化癌で高頻度に認められた. (2)maspinの発現はpromoter領域のdemetylationと良く相関していた. (3)maspin promoter領域のdemethylationは他に胃癌,胆道癌などの化生性粘膜でも生じており,細胞の分化と極めて相関していることが明らかとなった. (4)maspinのpromoter領域のdemethylationはglobal hypomethylationの結果と推測された. 4結果について,HPLCによるmCの定量を行った結果maspinのdemethylationと極めて良く相関した.さらに,このdemethylationはDNA methytransfearseのsplice variantの発現と極めて良く相関し,甲状腺未分化癌の悪性形質の一因として,DNMTの不活化global hypomethylationがある可能性が示唆された. 平成16年度は,DNMTのdominant negativeの実験を追加し,maspinの過剰発現の原因を特定したい. さらにmaspin expression vectorの感染実験により,浸潤・転移能の変化を検討し,maspinが甲状腺未分化癌の治療戦略の標的分子となり得るか検討する.
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