[背景]インド洋産タツナミ貝(Dolabella auricularia)から単離されたペプチド;dolastin 10より誘導されたTZT-1027(分子量701.99、構造式C_<39>H_<67>N_5O_6)は、生物学的活性として細胞分裂時に必須な微小管形成を阻害し、腫瘍血管特異的に血管内皮障害作用を呈すると報告されている。〔目的]今回われわれは、TZT-1027の乳癌細胞に対する抗腫瘍性をin vitro、in vivoにおいて検討する。また、TZT-1027によって誘発される血管内皮障害の作用機序を解明し、その臨床応用を目指す。[方法・材料]in vitroにおいて、TZT-1027の抗腫瘍効果をヒト乳癌株MCF-7、R-27を用いてMTT法にて検討した。また、R-27を用いてD-DST法にても検討した。in vivoでは、ヌードマウスにおけるTZT-1027の抗腫瘍効果及び毒性を検討した。[結果]in vitroにおいて、TZT-1027は、MCF-7に対して、濃度・時間依存性に増殖抑制効果を示した。一方、R-27に対しては、高濃度のTZT-1027においても増殖抑制効果を示さなかった。一方、in vivoでは、TZT-1027はMCF-7、R-27に対して、著明な増殖阻害効果を認めた(Inhibition Rate:75%、71%)。[今後の計画]引き続き、基礎的検討を重ね、in vivoにおいて、Evans blueを用いて、腫瘍血流遮断効果を検討していく。また、flow cytometry法にてTZT-1027暴露下での細胞周期の時間的変化を検討する。さらに、従来の抗癌剤との併用効果を検討する。
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