原発性甲状腺分化癌9例と再発甲状腺分化癌4例に対して、十分なインフォームドコンセントを得た後、本研究の手術を施行した。手術直前に99mTc-MIBI 600Mbqを静脈内投与した後、根治切除とリンパ節郭清を行なった。手術中および摘出後にリンパ節から発せられる99mTc-MIBI量をカンマプローベを用いて正確に測定した。13症例から摘出されたリンパ節は合計149個であった。それらのうち転移陽性リンパ節は32個で、陰性リンパ節は117個であった。これらのリンパ節にて測定された99mTc-MIBI量と、肉眼的および病理組織学的癌転移の有無ならびに術前の画像検査所見等を比較検討したところ、癌転移が陽性のリンパ節では陰性リンパ節に比較して明らかに99mTc-MIBIのカウント数が大きかった。本研究の手術を施行した全例において術後経過は良好であり手術後数日で退院となった。 これらの結果について、第36回甲状腺外科研究会(平成15年10月30〜31日、京都市)ならびに第37回甲状腺外科研究会(平成16年10月19〜20日、東京都)において成果発表を行なった。 本研究結果から導かれる今後の課題として以下3点が挙げられる。1:病理組織学的転移陽性リンパ節と陰性リンパ節の間で99mTc-MIBIカウント数が近接しているものが、摘出されたリンパ節149個中6個にあった。99mTc-MIBIカウントの最適な境界設定をより詳細に検討する必要がある。2:実地臨床への応用を目標とするので、本研究の手術手技に要する手間を従来のen bloc郭清と同程度にまで簡素化し、かつ所要時間を短縮する工夫が必要である。3:もう一つの実地臨床への応用として、とりわけ局所進行を来した甲状腺癌に対する切除手術において、郭清を必要とするリンパ節の取り残しが無いことを手術中に確認できる可能性が期待される。
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