前年度までの研究で口腔粘膜よりケラチノサイト幹細胞を分離し、これをin vitroで1週間培養増殖させ、さらに培養増殖させた口腔粘膜ケラチノサイトを円柱状の生体吸収性の基質(足場)に培養増殖させ、階層性に構築された新しいタイプの人工食道をin vitroで作成することに成功した。 本年度はビーグル成犬で移植実験を行った。まず犬背部皮下に口腔粘膜ケラチノサイトおよび円柱状の生体吸収性の基質(足場)でin vitroで作成した新しいタイプの人工食道を移植した。移植後1ヶ月で検討したところ、内腔に移植したケラチノサイトの生着が確認された。しかし移植後の人工食道内腔の狭窄が問題となった。この問題に対し、より異物反応が少なく、瘢痕増殖する3か月間内腔を確保した後自然に吸収される素材を探し求め、吸収性のステントを食道ステントとして内腔に留置する事とした。最新の再生医学分野の発展と工学技術の進歩を十分に利用した3つの新しい技術発展をそのまま応用した新しいタイプの人工食道開発である。この吸収性のステントを用い犬頸部食道を口腔粘膜ケラチノサイトと円柱状の生体吸収性の基質(足場)を用いin vitroで作成された人工食道で置換する移植実験を行った。移植後1ヶ月で犠牲死させ検討したところ人工食道の生着が確認され、狭窄も防止できた。 本研究では最新の再生医学分野の発展と工学技術の進歩を十分に利用した新しいタイプの人工食道開発が行われた。臨床使用を目指した今後の研究が期待される。
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