これまで胃癌において、CGH法によって高頻度に異常が確認されているchromosomeのlocusについては報告済みである。当教室においてもCGH解析を行い、胃癌組織において20qおよび8qのgainに加えて、18qと19pのlossが確認された。しかしながら、現在これらの染色体上に存在し、胃癌の進展・転移もしくは予後に影響する有力な候補遺伝子の同定に至っておらず、現在も鋭意解析を続行している。 一方で、食道癌においてはいくつかの有力な予後規定因子を同定し、2003年の日本外科学会総会と日本胸部外科学会総会において発表した。この結果より、これらの遺伝子発現の異常が食道癌同様に胃癌にも影響を与える可能性を考慮して、本年は、胃癌における癌抑制遺伝子のbag-1、およびリンパ管新生因子のVEGF-Cの発現について免疫組織学的検討を行った。 VEGF-Cは食道癌における結果と同様に、組織学的な分化度と有意な相関を示したが予後には影響していなかった。Bag-1は、どの臨床病理学的因子とも相関を認めず、単変量解析においても有意な予後因子とはなりえなかった。 これらの結果は、本年3月に開催される日本胃癌学会総会において発表予定である。 (PO-207 原田勝久 他;胃癌におけるVEGF-C発現の意義) (PO-211 藤原省三 他;胃癌におけるBAG-1発現の意義) 今後、CGH arrayもしくはmicroarray等による解析を進め、標的遺伝子の絞込みとこれらの臨床病理学的な意義についての解明を行っていく。
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