研究概要 |
【方法】ヒト大腸癌細胞株(DLD-1)にVEGF-C遺伝子を導入したDLD1-VEGF-C細胞株およびMock遺伝子を導入したDLDI-Mock細胞株を樹立した。5×10^6個の細胞をマウスの盲腸壁内に移植し、原発巣、腸間膜根部リンパ節、大動腺周囲リンパ節、肝、肺における腫瘍形成を評価した。各種細胞株にはGFP発現ベクターを併せてダブルトランスフェクションし、生体内で転移の有無を評価可能なシステムを確立した。【結果】盲腸における腫瘍形成率はDLDI-Mockで85%(12/14)、DLDI-VEGF-Cで78%(11/14)であった、原発巣における腫瘍体積はDLDI-Mock;2.58±0.65cm^3,DLD1-VEGF-C;2.43±0.26cm^3であり、有意差を認めなかった。腸間膜根部リンパ節あるいは大動脈周囲リンパ節に転移を認めたマウスの数はDLDI-Mockで2/12(16.6%)であったのに対し、DLDI-VEGF-Cでは7/11(63.6%)とDLDI-VEGF-Cで有意に多かった(p=0.01)。肝、肺にはいずれの細胞株においても転移を認めなかった.【考察】これまで我々は胃癌細胞株にVEGF-C遺伝子を導入する事により細胞株のリンパ節転移能が著明に上昇することをマウス胃壁同所移植モデルにおいて示し、報告してきた。今回、大腸癌細胞株にVEGF-C遺伝子を導入し盲腸壁に同所移植したところ、胃癌と同様にリンパ節転移能の上昇を認めたことから、大腸癌においてもVEGF-Cはリンパ節転移形成に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。【結論と展望】マウス同所移植モデルを用いた検討から、VEGF-C遺伝子導入により大腸癌のリンパ節転移能が亢進する事が示された。今後は、これらリンパ節転移株を複数樹立し、原発巣、転移リンパ節の新鮮凍結材料を確保することで、遺伝子発現解析の材料となり、profilingとプロテオミクス解析へと展開させる予定である。
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