染色体の(部分)増幅・欠失による癌や遺伝病、各種症候群などの原因関連領域を迅速かつ網羅的に解明するツールとして、所属研究室ではBAC-DNAを用いたArray based CGH法の開発を目指している。BAC-DNAマイクロアレイを作製するにあたり、慶應BACライブラリーよりランダムにクローンの末端シーケンスを解読し、ヒトゲノム完成シーケンス上へのマッピングを進めた。現在までに、8500クローンのマッピングが完了し、全ゲノムの約3分の1を偏りなくカバーしていた。例えば、我々が注目しているWilliam症候群(7q11.23;約1.6Mb欠失)の約3Mbにおける領域中については、のべ14クローン(平均長150kb)により約2分の1の領域をカバーしていることがわかった。一方、BAC-DNAを調整する方法として、独自に設計したアダプターを用いてBACクローンDNAをPCRで増幅する方法を確立し、21番染色体をカバーする258個のBACクローンの増幅を終え、現在マイクロアレイを作製中である。 また従来のマイクロアレイ実験の問題点であったダイナミックレンジや感度の改善、再現性の向上を図るため、新規スライドガラスの開発や標識方法の検討も同時に行った。特に金属粒子を用いた標識法を導入することにより蛍光色素を使う方法と比べ感度を10倍高めることが可能になった。これらの手法を用いて染色体部分領域の増幅・欠失の検出系の確立を進めている
|