研究概要 |
1、DoxycyclineのNF-kBシグナルへの関与についての検討。 膵臓癌細胞株Panc-28に20μg/mlのドキシサイクリン(Dox)を48時間前処置後、TNF-αを投与しNFkBが誘導されるかどうかを検討した。Gel-shift assayではDox投与例ではTNF-αによるNFkBの誘導はほぼ完全に阻害された。 2、Doxycyclineによるapoptosis誘導経路についての検討. 1.同様の実験系でmRNAを採取し、RNase protection assayを行った。その結果、Dox投与群ではTRAIL、FAS,FAS-Lなどのapoptosis誘導遺伝子の発現上昇を認めた。 3、DoxycyclineのNF-kB以外の因子への影響. 以上の実験結果をふまえて、DoxのNFkB抑制とapoptosis誘導のメカニズムについてさらに検討を行った。その結果、Doxを投与後24hrまでは、細胞内ではNFkB活性はむしろ上昇しており、その後低下し、サイトカイン不応性となることが判明した。さらにDox投与後48時間後のTNF-R発現を検討したところ、TNF-RmRNA量がDox投与後24Hから48Hにかけて低下することがわかった。これらの検討より、Doxは本来、TNF-Rを介してNFkBを活性化するが、長時間刺激によってTNF-R不応性が生じ、これによりその後のサイトカインに対するNFkB活性化が生じなくなることがわかった。 4、Doxycyclineの抗癌剤感受性増強効果の有無についての検討. これまでの結果をもとに実際にDoxが抗癌剤感受性を亢進させるかどうかについて検討した。 膵臓癌細胞株にDoxで前処置を行い、アドリアマイシン、パクリタキセル等の抗癌剤を投与すると、より細胞死が誘導され、抗癌剤に対する感受性が亢進した。以上の結果から、ドキシサイクリンはTNF-R不応性を誘発し、引き続く抗癌剤刺激によるNFkB誘導を阻害することによって細胞死を増強することが判明した。
|