我々は肝臓内の肝幹細胞を同定、採取し、培養した後に、肝細胞への分化を誘導して、新たに肝再生を構築する研究を進めている。ラット肝臓を酵素処理にて単細胞化し、抗CD34抗体を1次抗体として2次抗体結合ビーズによるラット肝幹細胞のpositive selectionを試みたが、ほとんど細胞成分が回収困難であり、その後のコラーゲンゲル及びHGFを用いた培養系による肝幹細胞の培養に成功していない。そのため、CD34以外の1次抗体の選択や培養系の改善を検討中である。ヒト肝臓での実験系では、外科的に切除されたヒト肝臓標本における肝幹細胞の局在を、抗CD34抗体、Cytokeratin 19抗体、c-kit抗体を1次抗体とした免疫組織染色にて検討したところ、Cytokeratin 19は胆管上皮細胞にて陽性であったが、CD34及びc-kitは明らかな陽性細胞を同定できず、この1次抗体による肝幹細胞の局在同定は困難と考えられた。また、肝臓組織をディスパーゼによる酵素処理にて単細胞化し、抗CD34抗体と2次抗体結合ビーズにてpositive selectionを試みたが、ほとんど細胞成分の回収が困難であった。このことより、ヒトにおいても肝幹細胞の選択に利用する1次抗体の検討が必要と考えられた。最近の報告により、CD29、CD49f、c-Metなどが肝幹細胞に陽性であり、これらの抗体の利用を検討している。また、臨床応用を考えた場合、肝臓内からの細胞採取が困難である可能性が出てきており、骨髄細胞やES細胞からの肝細胞分化誘導とその細胞を利用した肝再生構築の可能性についても同時に研究を進めている。
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