原発性肝癌の多中心性発癌は、合計9結節まで認めた。背景肝別に1症例当たりの結節数を見てみると、おのおのの結節数全てにおいてHC群に多く認めた。早期肝細胞癌、結節内結節型肝細胞癌および辺縁に早期肝細胞癌の領域を持つ肝細胞癌の腫瘍径の中間値は、それぞれ2.2cm(範囲:0.4-4.0cm)、3.0cm(1.0-5.0cm)および5.5cm(0.4-9.5cm)であった。早期肝細胞癌の検出率は、腹部超音波で96%、腹部CTで87%および腹部血管造影で65%であった。その他の結節の検出率は、各々ほとんどが100%であった。多段階発癌の頻度を腫瘍径別に解析すると、1cm以下が101結節中75結節(74%)、1-2cmが224結節中141結節(63%)、2-3cmが210結節中80結節(38%)、3-4cmが131結節中33結節(25%)、4-5cmが94結節中22結節(23%)と腫瘍径が増大するほど多段階発癌の頻度は減少傾向にあり、5cm以上では220結節中8結節(9%)であった。以上からC型肝炎の場合、慢性肝炎から前癌病変である腺腫様過形成を経て、早期肝細胞癌そして内部の脱分化が発生し結節内結節型肝細胞癌さらに進行癌へと進行していく。腫瘍がより増大すると、内部の進行癌が辺縁部に存在する早期肝細胞癌の領域を圧排し、早期肝細胞癌の領域が縮小し、最終的には全てが進行癌に置き換わることが推奨される。この過程は、B型およびC型の両者が重複感染している時にも、同様の傾向を示すことが今回の研究でわかった。B型肝炎の場合は、多段階に発癌するよりも、de novo発癌する傾向を示した。すなわち、ウィルスDNAがヒトの遺伝子に組組み込まれることが発癌の引き金となり癌化することが推測される。この過程は、非B非C型の肝炎にも同様の傾向を示すことが今回の研究でわかった。
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