冠動脈バイパス術では様々なデバイスの開発、使用により人工心肺および心停止を必要とせず、心拍動下に冠状動脈遠位吻合を行うOPCABが一般的に行われるようになってきた。冠状動脈バイパス術の更なる低侵襲化のために遠位吻合を自動的に行う、吻合器を作成することで手術時間の短縮および手術のクオリティーの向上が期待できると考えられる。本研究の目的は冠状動脈バイパス手術時の遠位吻合を確実に行うためのデバイスを開発することであり、その臨床応用の可能性を追求することである。実際には直径3〜5mm径の動脈を端側吻合するためのデバイスを試作し、屠殺豚大腿動脈を用いて実際に吻合実験を行い、引っ張り強度および水漏れ耐圧試験を行った。平成16年度には試作した冠状動脈バイパス術遠位吻合部自動吻合器を用いて、実際に屠殺豚下行大動脈を屠殺豚下行大動脈へ端側吻合を行う実験を行ったが、試作したデバイスに接着した血管固定用ピンの耐久性が弱く、また、組織に刺入するときの切れが悪く血管壁への刺入が困難であった。そこで平成17年度はデバイスに接着した血管固定用ピンの強度の向上(使用金属材料の変更およびデバイスへの血管固定用ピンの接着方法等)をについて検討を行った。また、血管固定用ピンの先端のカットおよびテーパーが可能かどうかを検討し、改良が行えるかどうか検討した。実際には現在冠状動脈吻合時に用いられている7-0および6-0モノフィラメント針をデバイスに接着して吻合実験を行った。市販の針では組織への刺入は容易であったが、デバイスへの接着強度が悪く、課題が残る結果となった。また、吻合時に血管壁およびクラフト壁をデバイスの針に刺入するためには冠状動脈バイパス術時にもちいるマイクロピンセットを用いると用意に操作が可能であったが、血管壁を刺入した後に針から血管壁が外れないように仮固定するための器具が在れば操作が容易となると考えられた。今後、現在までの実験結果から臨床応用が可能となるようなデバイスの改良を行いたいと考えている。
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