研究概要 |
まずI型樹状細胞(DC-1)が癌患者の予後に及ぼす影響を調べるため、Flow cytometerで患者末梢血中のTh1,Tc1の割合を測定し、予後を検討した。その結果、末梢血のTh1/Th2の比が高い。すなわち、Th1-DC1優位の症例はむしろTh2-DC2優位の群と比較して予後がむしろ不良であるという結果をえた。この傾向は特に進行癌症例において顕著であった。この理由として、進行した肺癌症例は、末梢血に腫瘍由来の抗原がより出現しやすく、それに反応したTh1-DC1がより活性化を受けているためであると考えた。従って、DC1は進行肺癌患者においても十分な活性をもつことが予想される。この研究成果は2003年胸部外科学会総会、2004年米国癌生物治療学会地方会、2004年日本外科学会総会において発表を行い、さらに雑誌Anticancer Researchに採用された。 また、この研究成果をふまえ、患者末梢血から白血球を採取して、DC-1の誘導を行い、患者に投与を行う予定であったが、当施設の細胞培養室は平成15年の薬事法改正後は基準を満たさず、患者への樹状細胞の投与が事実上できなくなった。しかし最近OK-432(ピシバニール)はin vitroでDC-1型樹状細胞を特異的に誘導することが明らかになった。そこで肺癌再発患者6名にOK-4325KEを皮下投与し、末梢血を採取したところ、全ての患者においてI型樹状細胞が活性化したことを示す末梢血Th1の割合を増加させることができた。 今後はI型樹状細胞によるさらに強力な免疫療法の開発を行っていく予定である。
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