1.弁膜症患者で全身麻酔・人工心肺下の関心術を施行し、房室弁逆流を有する患者においては可能な限り弁形成術を行った。前例において術前術後の心エコー図(カラードプラー法)を行い、形成弁の残存逆流をすべて記録した。現在は心房細動が残存した症例の逆流の程度と洞調律に復した症例の逆流の程度に有意差があるか否かを解析中である。母集団数が未だ少ないので、さらに症例を重ねていく過程にある。 2.解析対象となる症例を重ねていくうちに、ほとんどが心房細動患者であることから心房細動に対するメイズ手術が行われない限り洞調律の弁形成症例が蓄積されないことが判明した。これをふまえ、心房細動をともなう弁膜症手術症例では心房細動の制御を目的とした高周波Radiofrequency System による僧帽弁手術時の肺静脈口隔離術を可能な限り行い心房細動から洞調律の回復を得られた症例が蓄積され始めた。心房細動の残存自体が房室弁逆流と心機能に悪影響を及ぼすとの仮説も前提としているので、高周波Radiofrequency Systemによる僧帽弁手術時の肺静脈口隔離術による心房細動の制御自体がどの程度有意義か否かも、あわせて検討することとした。 3.上記症例をもとに高周波Radiofrequency Systemによる僧帽弁手術時の肺静脈口隔離術による術後早期の心房細動の制御効果を2003年5月に心臓血管外科学会学術総会(札幌)ですでに報告し、遠隔成績が不良であることを証明し得たので2004年4月に日本外科学会総会定期学術集会で報告の予定である。 4.現在はこれまで蓄積した症例の房室弁逆流データをもとに、利尿ホルモンなどの血液学的計測も含めた心機能の改善との相関を検討中である。また今後は従来のメイズ手術を簡略化した左房メイズを可能な限り採用し、引き続き心房細動の制御効果の検討を継続している。
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