昨年に引き続き共同研究者である国立がんセンター生物物理部北中千史博士より譲渡をうけた培地中からテトラサイクリンを除去することによりrasの発現が誘導されるグリオーマ細胞株U251-TA-PT2RasV12を継代して実験に用いた。1つの培養皿あたり0.5X10^5個の細胞を準備しテトラサイクリンを培地から除去するともっとも効率良く細胞死が誘導されることから、この実験系をひきつづきもちいた。昨年度の実験結果からcAMPアナログの濃度依存的に死細胞の割合が減少する傾向が認められたことから、本年度はこれらの結果の確認を行いつつ、より生理的な状態でのcAMPの細胞死抑制効果を検討した。細胞内cAMP濃度を上昇させるためにアデニル酸シクラーゼ活性化剤(Forskolin:FK)とフォスフォジエステラーゼ阻害剤(3-isobutyl-1-methylxanthine:IBMX)を単剤または併用して用いた。培地からテトラサイクリンを除去するのと同時にこれらの薬剤を培地中に投与した。テトラサイクリンを除去後3日目の細胞死の割合をdye exclusion assayにて検討した。ELISA法にて薬剤処理濃度に依存して細胞内cAMPの濃度が上昇していること、また薬剤併用により細胞内cAMP濃度がより上昇しやすいことを確認した。このときrasの発現が抑制されていないことをwestern blotにて確認した。最後にテトラサイクリン除去後3日目の細胞死の割合を検討した結果、薬剤投与による細胞内cAMP濃度上昇に比例して細胞死が抑制されることが確認できた。
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