悪性グリオーマではラミニン-8が腫瘍血管周囲に高発現しており、グリオーマの血管新生に重要な役割を果たしているものと考えられ、ラミニン-8をターゲットとした新たな治療戦略の展開が期待される。本研究では、ラミニン-8のグリオーマにおける発現様式及び血管新生との関連性や、アンチセンスを用いたラミニン-8発現抑制による腫瘍血管新生・腫瘍増殖への影響について検討した。 ヒトグリオーマ組織においてラミニン-8(α-4鎖)は腫瘍血管基底膜に高発現しており、low-gradeグリオーマに比べhigh-gradeグリオーマで有意に発現が亢進していた。また、ラミニンα-4鎖発現強度と腫瘍血管密度との間には強い相関がみられた(r=0.71、p<0.001)。 次に、ラミニンα-4鎖に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド(モルフォリノオリゴ、26Mer)を作成し、グリオーマ細胞株にEPEI法で導入した。α-4アンチセンス導入により、グリオーマ細胞の増殖能には影響なくα-4鎖蛋白発現は完全に抑制されたが、新生血管は形成された。新生血管周囲には血液の漏出がみられ、電子顕微鏡にて血管基底膜の形成不全が観察された。In vivo実験では、アンチセンスによるラミニンα-4鎖発現抑制により、蛍光標識したグリオーマ細胞の新生血管に沿う進展が完全に抑制された。 ラミニンα-4鎖の発現は腫瘍血管密度と有意な相関があり、ラミニン-8は血管基底膜の形成により腫瘍血管を成熟化させ、グリオーマの新生血管に沿った腫瘍進展に強く関与していると考えられた。
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