目的:本研究では外乱刺激に対するパーキンソン病者(PD)の立位姿勢保持障害の重症度分類について、重心動揺と下肢筋活動の面から検討することを目的とした。方法:被験者はPD16名と健常者各9名とした。被験者には本研究の趣旨を説明し同意を得た。PDの重症度はHoehn-Yahrの重症度分類でstage Iが5名、IIが7名、IIIが4名であった。被験者にダイナミック平衡機能検査装置EGUITESTのプラットフォーム(PF)上で開眼立位を保持させ、PFを前方または後方へ水平移動させた。PF移動は前方と後方移動を組合わせて10回連続で2セット施行した。あらかじめ被験者の右前脛骨筋(TA)と右腓腹筋外側(GAS)の筋腹に表面筋電用皿電極を貼り付けた。分析方法:PFから導出された4つの垂直分力からPF移動中300msと移動後500msのRMSを算出し、重心動揺量の指標とした。また、TAとGASの筋電図(EMG)もPF移動中300msと移動後500msにおいて測定し、積分筋電図(%IEMG)を算出した。結果と考察:PF移動中300msのRMSから、(1)健常者よりも大きく重心動揺が出現する者と(2)健常者と同等の動揺を示す者、(3)健常者よりも少ない動揺を示す者に分類された。(1)はstage Iの者、(2)はstage I・IIの者、(3)はすべてstage IIIの者であった。また、10試行におけるRMS変化は、(1)では試行を繰り返すことによって動揺が大幅に減少し、(2)ではそれより少ないが減少が見られたのに対して、(3)では試行回数による動揺減少は確認されなかった。このことより、姿勢保持障害は進行度によって異なること、stage I・IIにおいても、外乱刺激による反応を確認し、運動療法を行う必要があることが示唆された。また、ステージIIについては、さらに動揺の質について健常者との違いを示すことができる検査方法の検討が必要となった。また、IEMGについては、(1)(2)(3)による相違は確認されず、今回の分析方法とは別の分析方法を行う必要があることが示された。
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