研究概要 |
[目的]変形性関節症(OA)の病態に密接な関係のあるメカニカルストレスが軟骨細胞の遺伝子発現に及ぼす影響を検討し、炎症性サイトカインによる軟骨破壊抑制効果を持つとされるIL-4の軟骨保護効果をin vitro,およびin vivoで検討することを目的とした。 [方法、結果] 1)生後1週齢のWistar rat膝関節軟骨細胞を5日間培養後、Flexercell strain unit (Flexcell international corp.)を用いた周期的伸長ストレス(0.5Hz,7%伸張)を単独あるいはラットrhIL-4存在下に24時間負荷した。負荷前後の遺伝子発現の変化について、cDNAマイクロアレイ法による解析を行った。検討した1081の遺伝子のうち、ストレスによってiNOS,Cathepsin B,c-myc,TIMP-1,TGF-β3,VCAM-1を含む37遺伝子の発現が有為に増強し、IGFBP-5、MMP-3を含む46遺伝子の発現が低下した。このうち、誘導型NO合成酵素(iNOS)はストレス負荷後24時間でその発現が有為に亢進すること、IL-4添加により容量依存性に発現が抑制されることを半定量PCR法、Real-time PCRにて確認した。また、NO2/NO3 assayにより培養液中のNOx濃度も有意に減少することが判明した。 2)6週齢のWistar ratの右膝関節において、MCLおよびACL切離および内側半月板切除によるOAモデルを作成した(OA群)。左膝関節は関節包までの切開のみとした(Sham群)。OA群の半数にはラットrhIL-4 (100ng/50μl)を連日関節内投与(治療群)、残りのコントロール群はPBSを関節内投与した。術後2週、4週、6週で膝関節を採取、肉眼的観察後、パラフィンブロックを作成し、組織化学的検討を行った。IL-4の関節内投与により治療群ではコントロール群に比べて肉眼的スコアは有意に改善しており、組織学的にも軟骨細胞のアポトーシスならびに関節軟骨破壊は有意に抑制されていた。 [結論] IL-4は正常軟骨細胞において、メカニカルストレスによって発現が亢進したiNOS遺伝子の発現およびNO産生をin vitroで抑制し、その関節内投与はラット実験的OAにおける軟骨破壊を防止した。
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