本研究の目的は遺伝子発現阻害法のひとつであるshort interference RNA(siRNA)を用いて関節リウマチ(RA)や変形性関節症(OA)などの関節疾患に対する治療効果を検討することである。まずコントロールとしてGAPDHに対するsiRNAをラビットの軟骨細胞、ヒトのRA滑膜細胞にin vitroの様々な条件下で導入した。RT-PCRおよび蛍光標識を用いて、in vitroにおける最も最適なsiRNAの導入条件を誰定した。その結果、最適な条件下ではいずれの細胞でもほぼすべての細胞に導入が可能であることを明らかにした。導入試薬としてはAmbion社のsiPORTAmineが最も優れていた。 またわれわれは以前ノンウイルスベクターによる遺伝子導入法として、関節に電圧負荷をかけることにより遺伝子導入を行うエレクトロポレーションによる手技を確立しており、これをin vivoにおけるsiRNAの導入に応用した。FAMにより蛍光標識したGAPDHに対するsiRNAを導入試薬とともにDAラットの左膝関節に50μ1関節内注射をおこない、直後にエレクトロポレーションを施行した。導入1日後、蛍光実体顕微鏡下でラットの滑膜にsiRNAが導入されていることを確認した。 さらに関節炎症の主要なサイトカインであるTNF-α、IL-1βに対するsiRNAを作成した。作成したsiRNAをラットのマクロファージに導入し、培養液中のTNF-α、IL-1βの濃度をELISAで測定した。結果、コントロールに比べそれぞれ70〜90%の抑制効果を認め、siRNAの機能が予想通りであることを明らかにした。 今後、治療効果を評価するためにラット関節炎モデルの膝関節にsiRNAに導入し治療効果を検討する予定である。
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