骨組織に加わる比較的ゆっくりとした静的負荷は骨表面でのリモデリングを活発化させ、また、繰り返しの負荷は内側皮質のリモデリングを活性化するとされている。これらの違いは、骨組織内を伝搬するき裂挙動の相違により生じるものと推測されている。特に、マイクロフラクチャの生成-集積-連結過程の相違が骨内に生じる局部的応力場形成に関与しているため、負荷荷重の相違によりリモデリングの活性化に影響を及ぼしていると申請者は考えている。本研究の目的は、衝撃下における皮質骨の破壊挙動を高速度カメラにより観察し、マイクロクラックの発生機構について検討することである。 骨年齢あるいは骨密度は骨の機械的特性の変化に大きく影響を及ぼすため、本研究では一定年齢の骨が容易に入手でき、静的引張および圧縮特性に関して人間に近いとされているウシ皮質骨を用いる。試験片の採取は生後14から15ヶ月の市販のウシ大腿骨より行い、購入時冷凍状態にある骨幹部を切り落とし、内部の骨髄および表面に付着している軟部組織を除去した骨幹部1/3の骨皮質を試料とする。これらを機械加工により曲げ試験片に加工する。曲げ試験には、卓上材料試験機を用い、負荷ひずみ速度を三段階に変化させ曲げ試験を行った。 本年度は、衝撃負荷試験を行う前段階として、準静的曲げ荷重下で実験を行った。負荷速度は1mm/min、20mm/minおよび30mm/minの3種類に変化させた。試験中の試験片の破壊挙動は、比較的高速で進展するため、高速度カメラ(1秒間に1000コマ)で記録した。曲げ弾性率は負荷速度を変化させても、ほとんど変化しなかったが、曲げ強度については、負荷速度の増加とともに増加傾向を示した。今年度は、破壊のプロセスを解析するには至っていないが、現在、詳細な検討を行っている。
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