研究概要 |
本研究は本学再生医療科学部門で新たに分離・精製されたマウス骨格筋間質由来の幹細胞(Tamaki T et al.,J Cell Biol.2002.)を用いて、末梢神経、特に運動神経の再生を試みるものである。本幹細胞は、培養系で筋芽細胞、内皮細胞、脂肪細胞に分化し、NOD/SCIDマウス骨格筋に移植することで筋細胞、血管内皮細胞へと最終分化する細胞でありSk-34細胞及びSk-DN細胞(Tamaki et al.Exp.Cell Res.2003)と命名された。本年度は、これらの幹細胞による筋肉内の末梢神経再生が可能かどうかを検討した。その目的で、マウス重度筋挫滅モデルを作成した。このモデルは左前脛骨筋のモーターポイントを中心に、その周囲の筋線維、血管、神経線維を人技的に切除することによって作成し、右側を無処置のコントロールとした。重度筋挫滅モデル作成前後に坐骨神経からの電気刺激による筋緊張力測定を行った結果、処置前に対して処置後には97%機能が消失していた。このモデルに対しGFPマウス骨格筋から得られたSk-34細胞及びSk-DN細胞移植した。移植4週間後に機能(緊張力)測定し、さらに蛍光顕微鏡による観察と免疫組織学的検討を行った。その結果、コントロール群(細胞移植を行わなかった群)が、20%の筋湿重量と機能の回復であったのに対し、移植群では60%の筋湿重量と機能回復を認めた。この回復を補償するように移植群では、多数のGFP陽性の筋繊維と血管さらに神経線維が認められた。さらに、筋間質にはニューロン特異的抗体であるNSE陽性の細胞が認められた。さらに免疫電顕的検索により、移植した細胞が筋系(筋芽細胞、筋細胞)、血管系(血管内皮細胞、周皮細胞、血管平滑筋)、神経系(シュワン細胞、ニューロン)の細胞に分化していることが明かとなった。即ち、「Sk-34,Sk-DN細胞は末梢神経を再生する」ことが明かとなった。 この結果に基づき、今後中枢神経系への分化誘導が可能かどうかを脳挫傷モデルや脊髄神経損傷モデルを使用しさらに検討していきたいと考えている。
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