研究概要 |
骨格形成過程におけるRunx2とインシュリンシグナルの共役について調べ、骨形成シグナルの位置づけを研究した。Runx2の強制発現によってインシュリンシグナルは活性化を受け、この機構を介して骨芽細胞・軟骨細胞は分化することを明らかにした。インシュリンシグナルはRunxZをDNA結合・転写活性のレベルで活性化して分化を亢進させることがわかり、相互に協調して分化が調節されていると考えられた。また、これらのシグナルの共役は骨芽細胞の運動(ケモタキシス)現象においても観察された。加えて軟骨特異的dnRunx2トランスジェニックマウスでは野生型マウスで観察されたPI3K,Aktの前肥大化軟骨層から肥大化軟骨層にかけての発現上昇が観られず、軟骨の肥大化が抑制されていた。以上の内容は、" Runx2 induces osteoblast and chondrocyte differentiation and enhances their migration by coupling with PI3K-Akt signaling."の題名でJ Cell Biol誌に投稿中。 この他、細胞運動性を調べる中で薬物効果にも触れ、"Statins inhibit osteoblast migration by inhibiting Rac-Akt signaling."の題名でBiochem Biophys Res Commun誌に掲載された。 また軟骨細胞分化についての検討の際にもデキサメタゾンの効果を調べた成績を、"Dexamethasone inhibits insulin- induced chondrogenesis of ATDC5 cells by preventing PI3K-Akt signaling and DNA binding of Runx2."の題名でJ Cell Biochem誌に投稿中である。 来年度は軟骨細胞の肥大化(細胞の大きさ)について集中して調べる予定である。また、myrAktによるRunx2調節機構の解明についても2-D電気泳動により因子同定を試みる予定。
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