背景:βアドレナリン受容体遮断薬(βブロッカー)は心筋などに保護効果がみられているが、脳虚血に対してもみられている。短時間作用型のβブロッカーの脳保護作用を実験的に検討することによって、その機序を解明し、今後の急性脳虚血障害の予防薬の一つの手がかりになることが期待できる。 方法:雄のS-Dラットを用いて、ハロセン麻酔下に行う。右の大腿動静脈にカテーテルを挿入する(血圧測定、薬物投与用)。グループを対照群(生食)、エスモロール(200μg/kg/min)、ランジオロール(50μg/kg/min)、プロプラノロール(100μg/kg/min)、カルベジロール(4μg/kg/min)の5群に分ける(各群n=8)。虚血開始約30分前に各薬剤の静脈内投与を開始し、24時間後まで継続する。側頭筋の温度を37.5℃に保ち、総頚動脈、内頚動脈、外頸動脈を露出しその枝を処理する。外頸動脈に分岐後2mmの部位を切離し、そこより先端を丸く細工した3.0ナイロンを内頚動脈へ約22mm進める。レーザ血流計により脳皮質の血流を測定し、血流が低下したところで、ナイロンを進めるのを中断し、その位置で2時間維持する。虚血2時間後、内頚動脈のナイロンを引き抜き再灌流させ麻酔より覚醒させる。再灌流後22時間後に、神経学的検査を行い、再びハロセン麻酔下に、脳を取り出す。脳を冠状断に7つの切片に切りTTC(2.3.5-triphenyltetrazolium chloride)で染色する。梗塞巣をコンピュータを用いて数字化して各群を比較する。 結果:対照群では脳梗塞の程度が(皮質50±12%、線状体64±6%)で、プロプラノロール(皮質19±20%、線状体36±28%)、カルベジロール(皮質21±13%、線状体27±6%)、エスモロール(皮質14±5%、線状体15±6%)のβブロッカー使用した群で、梗塞範囲が減少する傾向が見られた。 結論:βブロッカーによりラットの脳梗塞モデルにて梗塞巣の減少がみられ、保護効果が示唆され、この機序に関しては今後の研究が必要である。
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