平成15年度作成した空気塞栓モデルを用い、平成16年度には血管内灌流液を変更したモデル及び血管壁を損傷したモデルを作成し、血管壁と気泡の間の単位面積あたりの接着力へそれぞれが及ぼす影響を測定した。本年度はこれらの経験をもとに同様なモデルを用い、灌流液中の血小板の影響を検討した。 ラットから脱血した血液から血小板を含む血漿と血小板を含まない血漿を作成し血管内灌流液とした。各々を用いて灌流した微小血管内に長さ200ミクロン程度の気泡を5分、10分、30分留置した際の血管壁と気泡の間の接着力を検討した。 血小板を含む血漿を用い、10分間気泡を血管内に留置すると接着力は139±27dyne/cm^2と血小板を含まない場合(54±12dyne/cm^2)と比較し有意に上昇した。5分間気泡を血管内に留置すると接着力は血小板を含む場合、51±15dyne/cm^2、血小板を含まない場合、37±5dyne/cm^2と有意差はなかった。30分間気泡を血管内に留置した場合も接着力は血小板を含む場合、57±11dyne/cm^2、血小板を含まない場合、40±10dyne/cm^2と有意差はなかった。 昨年度までの結果と本年度の結果を総合すると血管壁と血管内微小気泡の間の接着力は様々な因子によって影響を受けることが明らかになった。本研究課題において、モデルの作成及び接着力の測定という目的は達成したと考えられるが、研究の過程でこの課題に影響を及ぼす因子が多数あることも明らかになった。今後さらなる研究が必要と考えられる。
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