心筋虚血時の心臓交感神経終末ノルエピネフリン過剰放出抑制あるいは放出されたノルエピネフリンの心筋間質過剰貯留が重篤な不整脈や心筋梗塞の拡大を招く。このノルエピネフリン上昇を抑制する方法を検討することが本研究の目的である、そのために、まず心筋虚血の動物モデルを作成した。ネンブタール麻酔下のウサギに心臓マイクロダイアリシス法を適応し、冠動脈閉塞による心筋虚血・非虚血部位での心臓交感神経よりの神経伝達物質(ノルエピネフリン)を測定した。1時間の冠動脈閉塞により虚血部ノルエピネフリン濃度は約700倍に上昇し、その後の再潅流早期(0-15分)で心筋間質ノルエピネフリン濃度はピーク時の約20%まで減少することが観察された。また非虚血部においては虚血部で見られるような昇降は観察されなかった。 さらに本系を用いて、以下の実験を行った。 目的1:各種麻酔薬が交感神経異常興奮を修飾するか イソフルラン(0.5%、2%)吸入時の心筋間質ノルエピネフリン濃度応答を測定し、イソフルラン麻酔薬の用量-作用曲線を作成することを試みた。 目的2:各種麻酔薬が交感神経終末機能に及ぼす影響と心筋細胞損傷の程度の関係について ネンブタール麻酔、イソフルラン麻酔での冠動脈閉塞による心筋間質ノルエピネフリン、乳酸、グリセロール、グルタメート濃度応答の測定を試みた。 目的3:各種麻酔薬の局所投与(末梢作用)による虚血時応答の修飾について 現在、ダイアリシスファイバーを介した静脈麻酔薬投与により、冠動脈閉塞時のノルエピネフリン応答に対する影響を検討中である。 上記内容について、データを収集し、解析を始めているところである。その内容の一部について16年度生理学会において発表する予定である。今後、さらにデータを積み重ねて麻酔薬の心筋虚血時ノルエピネフリン応答修飾のメカニズム解明に取り組む予定である。
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