研究概要 |
本年度においてはラット初代培養大脳皮質細胞を用いてNMDAおよび一酸化窒素(NO)による細胞障害モデルを作成し、それぞれ一酸化窒素合成酵素阻害薬、低温療法による保護作用の有無を確認することに成功し、それぞれ論文として研究結果の発表を行った。妊娠16日目のウイスターラットより胎児を取り出し、大脳皮質を採取し脳神経細胞を分離し初代培養を行った。その後、通常のインキュベーターを用いて14日間培養を行った。新しい一酸化窒素合成酵素阻害薬ONO1714を用いた研究ではその一酸化窒素合成酵素(NOS)の型による反応の違いを調べた。一酸化窒素にはフリーラジカルとして細胞を傷害する働きと血管を拡張させることにより神経細胞を保護する作用があり、前者は神経型nNOSおよび誘導型iNOSの作用、後者は血管内皮型eNOSの作用とされている。ONO1714ではiNOSの抑制がeNOSに比べて強力であるとの報告があるがnNOSに関しては報告がなかった。今回の研究では非特異的NOS阻害薬に比べて強力なnNOSに対する抑制作用が確認されると同時にNMDAによる細胞障害を減弱させることも確認された。また低温療法のNO性神経細胞障害に対する保護作用を調べた研究では同様に作成した培養神経細胞を用いた。2段階の温度(常温37度、低温;22度)においてそれぞれの温度でほぼ等しい半減期を示すNOドナーを使用し神経毒性の差を調べた。培養細胞を各温度にてNOドナーに6,12,24時間暴露した。その結果、両群において細胞の生存率に有為差はなかった。以上の結果より低温療法はNOが既に発生した場合ではその神経毒性に対しては保護効果がないと考えられた。
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