各種治療に抵抗性である難治性腰下肢痛患者6名に対して硬膜外内視鏡術を施行した。疾患名は腰部脊柱管狭窄症4名、Failed Back Pain Syndrome1名、腰部椎間板ヘルニア1名であった。患者を腹臥位にし、細径内視鏡をセットしたビデオガイドカテーテルをイントロデューサーを通して仙骨裂孔より挿入し硬膜外腔の肉眼的観察をおこなった。6名全員に疼痛の原因になっている神経根領域に硬膜外腔の癒着が認められた。また4名に同部の発赤が認められた。内視鏡操作による癒着剥離は4名で可能であり、2名は癒着が高度なため不可能であった。癒着剥離を行うことの出来た4症例において、内視鏡の先端を疼痛の原因となっている神経根領域に置き、生理的食塩水を10ml注入洗浄を行い回収し、硬膜外洗浄中のサイトカイン(IL-1、IL-6、IL-8、TNR-α)と接着分子(ICAM-1)を測定した。健常ボランティアでの手技はまだ行っていない。よって今のところ難治性腰下肢痛患者においてサイトカインと接着分子の値の意義はまだ不明である。また、硬膜外内視鏡術の治療効果をみるために、術前、術後(1日、7日、1ヶ月、2ヶ月、3ケ月)の電流知覚閾値、間欠性跛行距離、疼痛の程度(安静時痛、体動時痛)、しびれの程度、硬膜外ブロックの有効期間も測定した。癒着剥離が出来た4名全員に3ヶ月にわたる疹痛としびれの軽減傾向、硬膜外ブロックの有効期間の延長がみられた。また4名中3名において電流知覚閾値(2000Hz)の改善も認められた。今後、症例を増やして治療効果と硬膜外洗浄液中のサイトカインと接着分子の量の変化を検討する予定である。
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