難治性腰下肢痛患者に対する硬膜外内視鏡術の鎮痛効果、神経機能への影響を評価した。また、疼痛の原因となっている神経根領域にサイトカインと接着分子が産生されているかを調べるため、硬膜外腔の洗浄液中のサイトカインと接着分子を測定した。ビデオガイドカテーテルに覆われた硬膜外内視鏡を腹臥位にした患者の仙骨裂孔より挿入し、責任神経根がある椎間孔付近の硬膜外腔の癒着剥離と生理的食塩水による洗浄を行い、洗浄液中のサイトカインと接着分子を測定した。また、術前、術後1週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月に腰下肢痛の程度、Disability Index、硬膜外ブロックの鎮痛効果日数、責任神経根の支配皮膚領域での電流知覚閾値(2000、250、5Hz)を測定した。腰下肢痛とDisability Indexは術後3ヶ月まで術前に比べ有意に低下した。硬膜外ブロックの鎮痛効果日数も術後有意に延長した。電流知覚閾値は2000Hzで術後3ヶ月まで術前と比べ有意に低下したが、250Hzと5Hzでは術前、術後を通して変化は認められなかった。腰部椎間板ヘルニア患者で洗浄液中の接着分子が検出されたが、腰部脊柱管狭窄症では検出されなかった。2000Hzの電流知覚閾値はAβ神経機能を反映しており、この神経は圧刺激よる障害を受けやすいことが知られている。硬膜外内視鏡術の鎮痛効果とAβ神経機能の改善期間が一致することから、硬膜外内視鏡術の治療効果機序の一つとして、硬膜外腔癒着による神経根の圧迫の解除が考えられた。また、腰部脊柱管狭窄症群では洗浄液中のサイトカインや接着分子は検出されなかったことから、これらの要素は脊柱管狭窄症患者の疼痛発現への関与が少ないことが推測された。
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