(目的)脳実質内細動脈の反応性変化は、脳血管抵抗を大きく左右すると考えられるが、炭酸ガスがこれらの血管径を拡張させる機序は検討されていない。本研究では、高炭酸ガスがATP感受性カリウムチャネル(KATP)を介して脳実質内細動脈を拡張させるか否かを明らかにすることを目的とした。 (方法)ラットの脳を約250μmの厚さの新皮質を含むスライス標本とした。標本を観察用容器に入れ、酸素93%+炭酸ガス7%(PCO2=40mmHg)または酸素90%+炭酸ガス10%(PCO2=50mmHg)で飽和したクレブス液で持続還流した。コンピューターに接続した顕微鏡で脳実質内細動脈(内径3-10μm)を観察した。血管径の変化はコンピューター上で専用の画像解析ソフトを用いて測定した。血管をプロスタグランディンF2αで収縮させ、KATP拮抗薬グリベンクラミド、カルシウム依存性カリウムチャネル拮抗薬イベリオトキシンが、炭酸ガスによる脳血管拡張反応に及ぼす作用を検討した。さらに、KATP開口薬レブクロマカリムあるいはニトロプルシドによる血管拡張反応に及ぼすグリベンクラミドの影響を検討した。 (結果)高炭酸ガスによる脳血管拡張反応はグリベンクラミドで完全に抑制されたが、イベリオトキシンでは影響されなかった。グリベンクラミドはレブクロマカリムによる血管拡張を完全に抑制したが、ニトロプルシドによる拡張は抑制しなかった。 (結論)KATPはラット脳実質内細動脈での高炭酸ガスによる血管拡張反応に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
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