研究概要 |
【目的】アセチルコリンエステラーゼ阻害薬であるドネペジル(アリセプトTM)は、脳内アセチルコリン濃度を上昇させて神経伝達を活性化し、アルツハイマー病の症状を改善すると考えられている。しかし、本薬剤が、実際に脳血管を拡張させるか否かについては明らかでない。また、脳内でアセチルコリン濃度が上昇した場合、一酸化窒素合成酵素が活性化され、産生された一酸化窒素により脳血管が拡張する可能性があるが、これについても不明である。本研究では,臨床有効血中濃度のドネペジルが、ラット脳実質内微小血管を拡張させるか否か、またこれらの血管拡張反応が一酸化窒素合成酵素活性を介するかどうかを検討した。【方法】Live computerized videomicroscopyシステムを用い、ラット脳スライス内の細動脈(内径5-9μm)を観察した。一酸化窒素合成酵素阻害薬L-NAME(100μM)存在下または非存在下にプロスラグランディンF2α(0.5μM)でスライス内の血管を収縮させ、アセチルコリン(1,10,100μM)およびドネペシル(1,3nM)による拡張反応を観察した。【結果】アセチルコリンおよびドネペジルは脳スライス内の細動脈を濃度依存性に拡張させた。L-NAMEは、アセチルコリンおよびドネペジルによる血管拡張反応を完全に抑制した。【結論】ドネペジルは一酸化窒素合成酵素活性を介して脳微小血管を拡張させることが明らかとなった。ドネペジルは、脳血管を拡張させるという薬理学的特性からもアルツハイマー患者の治療に貢献しているかもしれない。
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