研究概要 |
平成15年度は,マウスの頚動脈小体摘出標本を用いたパッチクランプ記録法を確立し,glomus細胞のvoltage-gated K currentを記録することに成功した。この新しい手技について学会にて発表し,Neuroscience Letters誌に記載された。これまでのglomus細胞のvoltage-gated K current記録ではglomus細胞の分離もしくは培養が行われていたが,本方法はこれらの細胞分離・培養をまったく必要としないもので学会,雑誌にて評価を得た。そしてglomus細胞のvoltage-gated K currentの特徴glomus細胞の低酸素応答,glomus細胞のコリン作動系についてDBA/2J系とA/J系マウスについて比較検討した。低酸素性呼吸応答が良くglomus細胞の発達が良い頚動脈小体を持つDBA/2J系マウスでは,良好なglomus細胞の低酸素応答とコリン作動系が確認された。これに対して,低酸素性呼吸応答が悪くglomus細胞の発達が悪い頚動脈小体を持つA/J系マウスでは,明白なglomus細胞の低酸素応答およびコリン作動系が確認されなかった。この結果は,学会にて発表し,現在も研究を重ね,専門誌への投稿を検討中です。 また,DBA/2J系とA/J系マウスの頚動脈小体の形態学的個体差をJournal of Applied Physiolology誌に投稿し,掲載された。そして,これらの頚動脈小体の形態学的個体差における遺伝学的検討を行うために,DBA/2J系とA/J系マウス掛け合わせたF1マウスを作成し,形態学的検討を行った。F1マウスでは,両方の親からの遺伝を受け継ぎ,DBA/2J系とA/J系マウスの両方の形態学的特徴を兼ね備えた頚動脈小体を持っていた。今後,このF1マウスの機能学的特徴を知るために,パッチクランプ記録法による電気生理学的検討を行っていく予定である。
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