理論上100gのソーダライム(85%Ca(OH2)、15%H2O)は最大26Lの二酸化炭素を吸収する。本研究では擬似的麻酔回路を作成し、3種類の二酸化炭素吸収剤(ドレーゲルソーブ800プラス、ドレーゲルソーブフリー、アムソーブ)1kgをそれぞれに充填し、二酸化炭素300ml/minを回路内に供給し、一回換気量を700ml、呼吸回数12回/min、(分時換気量8.4L/min)、新鮮ガス流量500ml/minとして吸気二酸化炭素濃度が5mmHgとなるまでの時間を測定し、また、二酸化炭素吸収能を算出した。その結果ドレーゲルソーブ800プラスは、ドレーゲルソーブフリー、アムソーブの二酸化炭素吸収能力はそれぞれ13.8±0.3、12.3±0.2、9.1±0.7L of CO2 per 100g of absorbentと二酸化炭素吸収能は26L/100gよりも大幅に低下した。 循環麻酔回路ではキャニスターを一回通過する間に二酸化炭素を吸収しなければならない。そのためには二酸化炭素吸収剤とガスの接触面積が大きく、二酸化炭素吸収剤とガスの接触時間がある程度必要となる。さらに二酸化炭素吸収剤の反応速度が遅ければそれだけ二酸化炭素吸収剤とガスの必要とされる接触時間が長くなる。キャニスター通過流量はMV-FGFであるから、低流量麻酔はキャニスター通過速度が速くなり、二酸化炭素吸収剤とガスの接触時間が短くなる。従って、低流量麻酔では二酸化炭素吸収能は26L/100gよりも大幅に低下する。また、二酸化炭素吸収剤は二酸化炭素を吸収する際に水分と熱を発生し、二酸化炭素吸収剤の含水率の異常な増加を引き起こす。それにより二酸化炭素吸収剤の反応速度が低下しさらに二酸化炭素吸収能を低下させると考えられた。
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