研究概要 |
敗血症における血行動態を形成する原因のひとつとして内因性大麻の関与が示唆されている。動物実験においては,エンドトキシンを投与すると内因性大麻が上昇し、血行動態との間に相関関係のあることがわかってきた。そこで、健常人の内因性大麻の正常値を測定し、様々な周術期および敗血症患者の内因性大麻の推移を検討した。内因性大麻には、血小板由来の2-AGとマクロファージ由来のanandamideがあるが、両者ともに脂質メディエーターでありエイコサノイドの一種にあたる。従来より、プロスタグランジンをはじめとするエイコサノイドはガスクロマト質量分析により測定されている。当施設では、内因性大麻のガスクロマト質量分析法による測定方法を開発し、健常成人の内因性大麻の正常値を決定した。つづいて、敗血症患者の内因性大麻の推移を計測し、エンドトキシン吸着療法の前後で内因性大麻がどのように変化するか検討した。敗血症患者の内因性大麻の産生量は亢進し、高値が遷延していることが判明した。また、エンドトキシン吸着療法の前後では、内因性大麻が減少する結果を得た。特に、エンドトキシン吸着療法に伴い、循環動態が改善し、敗血症性ショックが改善した症例において2-AGの著名な減少がおこることが分かった。現在は、敗血症の起因となる病態のちがい、基礎疾患、起因菌による内因性大麻の推移について症例を重ね検討中である。また、基礎的な検討として、比較的手術の侵襲が少なく健常人の婦人科疾患の周術期、手術侵襲の強い食道癌の周術期の内因性大麻の推移と敗血症患者の周術期の推移を比較検討し、敗血症の病態の把握、治療法の開発をしていく予定である。
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