敗血症状態の循環動態の形成に内因性大麻が関与している。内因性大麻にはアナンダマイドと2-AGの2種類が存在するが、血小板由来の2-AGが敗血症状態ではアナンダマイドの約100倍の濃度で血中に存在している。エンドトキシン吸着療法は、敗血症においてその病態形成の最も上流に位置するエンドトキシンを吸着することにより、炎症性メディエーター産生のカスケードを抑制することを目的に開発された。しかし、エンドトキシン吸着療法を敗血症患者に施行すると、開始直後より循環動態の改善を認めることが多く、また、グラム陰性桿菌によらないグラム陽性菌感染による敗血症状態の循環動態をも改善することより、エンドトキシン以外の何らかの敗血症における循環動態抑制因子を吸着除去する能性が想定されていた。その原因物質のひとつとして内因性大麻の関与が疑われていた。そこで、東京慈恵会医科大学DNA研究室にて開発されたGC/MSによる内因性大麻の一斉測定法により、敗血症患者のエンドトキシン吸着療法前後の内因性大麻の推移を測定した。エンドトキシン吸着療法の前後で2-AGが有意に減少した。アナンダマイドは有意な減少をみせなかった。また、2-AGが有意に減少する場合には有意な血圧の上昇も伴うことより、敗血症性ショック状態の離脱にエンドトキシン吸着療法は有効であり、血圧上昇のメカニズムとして内因性大麻の吸着除去が起きていることを確認した。
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