体外循環を用いた手術において心拍再開後の心臓刺激伝導系異常による不整脈は心筋障害と共に重大な循環不全の契機となる。今回心房心室伝導評価に経食道心電図検査を用いた。経食道心電図の計測で高電位のQRS波形を記録でき対ノイズ性能の向上を確認し、胸部誘導と比較して呼吸性変動が少なく電位変化を捉えやすい事を確認した。刺激伝導系に対する虚血再灌流障害の重症度評価のために大動脈遮断解除直後から心房ペーシングを行い心房心室伝導性の評価を行った。大動脈遮断解除直後には心房ペーシングにもかかわらず房室伝導障害を呈し全例心室ペーシングで対処した。体外循環離脱時間経過とともに完全房室ブロックはI度の房室ブロックからPQ時間の短縮とE/Aの改善と心収縮性の改善を認めた。心室内伝導障害を示した重症例では軽症例と比較し体外循環離脱時における心電図R波高の低下とQRS時間の延長を示した(vs.軽症例、p<0.05)。心電図R波高の回復過程はQRS時間の短縮を伴っていた(vs.軽症例、P<0.05)。虚血再灌流心筋において心室内刺激伝導障害の程度を心電図R波高の回復とQRS時間の短縮により評価できることを示した。刺激伝導障害時おける心室の協調性壁収縮運動を評価するために心臓超音波画像および多次元アナログ情報収集ソフトの開発を行った。OSにLabView、IMAQを用いた(日本NI社)。ワークステーションに多次元アナログ情報収集ボード(PCI-6031E)、画像採取ボード(PCI-1411)を用い、毎秒33枚の画像収録と多アナログチャンネルを1kHzで収録できた。術中経食道心臓超音波検査装置からの画像(心収縮性)と肺動脈カテーテルからの中心静脈圧と動脈圧、多誘導心電図を同時に描画し心収縮性と前負荷および後負荷の関係を理解しやすい表現ができた。経食道心電図誘導(回旋枝領域)胸部V5誘導(前下降枝領域)II誘導(右冠動脈領域)心電図ST変化を同時に計測し、壁運動異常領域との相関関係を明確に示すことが出来た。
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